6893人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
今度はしっかり声を出して伝えた。掠れた声で格好はつかなかったが、とにかく彼に伝わればそれで十分だと思った。
再びゆっくりとその腕に包まれる。今度は優しい力だった。緊張と安心感という両極端な感情に挟まれ、ただ必死に彼のシャツにしがみついた。
何かを決意するように、蒼一さんが頷く。
車の外は分厚い雲が未だ空を覆っていた。
私たちを見守っていた月さえも、まるで隠れるように見えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!