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車を慣れた駐車場へ停めた。エンジンを切りシートベルトを外す。
隣を見ると、咲良が心配そうに私のことをみていた。そんな表情が、どこか子供の頃の彼女を思い出させて私は微笑んだ。
二人で車から降りて咲良の隣へ移動する。すぐに咲良の小さな手を握った。それだけのことで、彼女がびくりと緊張で反応したのがわかる。かくいう私も、ただ手を繋いでいるだけなのに心臓がいつもより速く鼓動を打っていた。
二人で白い家を見上げた。咲良に声をかける。
「大丈夫?」
彼女は私の方をみる。そしてあの柔らかな笑顔で笑って見せてくれた。
「はい」
「ごめんね、行こうか」
二人で足を踏み出して実家の門をくぐる。そして鍵を開けて玄関の扉を開いた。今日も来た自分の実家は、ずっと育ってきた場所だというのに酷く嫌なところに見えた。
そのままリビングへ行こうと移動すると、物音を聞きつけたのかこちらが開けるより先に扉が開いた。
「天海さん!」
新田さんだった。もう外も暗くなっているというのにまだ残っていたらしい。私の顔を見て安心したような表情になったが、隣にいる咲良をみてはっとした顔つきになった。
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