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途中、新田茉莉子がこちらに声をかけた。顔を真っ赤にしている。私は咲良にピタリと肩を寄せ、一度足を止めた。
口角を上げて笑う。
「新田さん。僕の誕生日の日、電話番ありがとう」
嫌味を込めて告げた。びくんと彼女の体が跳ねる。
あえてそれ以上は何も言わなかった。この結末なら、言わなくても言いたいことはきっとわかってるだろうな。
「蒼一! ちょっと待って!」
母が私の肩を掴む。それを振り払って、リビングのドアノブに手を伸ばしたときだ。
私たちが開くより前に扉が動いた。そこから出てきたのは、よく知っている顔だった。相手は驚いたように私を見、目を丸くして言う。
「蒼一、来てたのか。何度も電話したんだぞ、休みだったろ今日」
父だった。スーツを着ているのを見るに仕事帰りだ。彼は私を見た後、隣の咲良にも気がついた。そして笑顔で言う。
「咲良さんも来てたのか! こんばんは、お久しぶりだね」
「ご、ご無沙汰しております」
「……ん? 新田さん? なんだこれは。なんかのパーティーでもしてたのか?」
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