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不思議そうに部屋を見渡す。そんな父に、母は慌てて縋りついた。味方を捕まえた顔だった。
「あなた!」
「なんだ、そんな怖い顔して」
「蒼一に何か言ってやってください、この子会社を辞めるだなんて」
「はあ?」
ぽかんとしている父に向かって、今度は私が話しかけた。怒りの声を抑えながらぶつける。
「父さんも知ってたの? 僕と咲良のこと」
「え?」
「母さんが、僕と咲良を離婚させて新田さんと結婚させようとしてたこと。父さんも知ってたんですか?」
睨みつけながらそう父にたずねたが、彼はあんぐりと口を開けていた。その表情を見てピンとくる、どうやら父は無関係のようだ。母が一人突っ走っていたのだろう。
思えば、咲良と同居開始する初日、両親に挨拶に行った時は父も渋い顔をしていたが、パーティーの時は母と違って咲良と普通に接していた。彼はもう結婚に反対なんてしていなかったらしい。
父は母の方を向いて狼狽えたように言う。
「どういうことだ?」
「どうもこうも。二人はちゃんと夫婦としてうまく行ってないみたいだから、離婚を勧めて次の相手を探してあげただけよ」
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