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母はいけしゃあしゃあとそんなことを言った。イラッとした自分はつい声を大きくして言う。
「正当化するな! 僕たちはちゃんと話し合ってこれからも二人でやっていくって言ってるじゃないか。裏で咲良を追い詰めて離婚届にサインさせたり、二人で手を組んでやることが汚いんだよ!」
声を荒げた私を、咲良が小声で名を呼び嗜めた。父は信じられないという目で母を見た。
「本当か?」
母は少し口を尖らせながら頷いた。
「でも追い詰めたなんて言い方が悪いです。私は天海家のことを考えてやったんですよ! 咲良さんは会社を継ぐ蒼一をフォローしていくには弱すぎると思ったんです。だからもう少し相応しい人を」
話す母の言葉に被せるように、父の怒号が響いた。それは広いリビングに反響するほどの大きさだった。
「馬鹿!!」
全員が停止する。父は顔を真っ赤にしていた。つい私の怒りもおさまり冷静さを取り戻す。母は仰け反って驚いていた。父はそんな彼女に詰め寄る。
「わかってるのか? 会社を立ち上げた私の父が生前から言ってた約束だぞ、藤田家との繋がりは大事なものだとお前も知ってるだろ!」
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