10.蒼一の答え

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「それはそうだけど。でも、あなただって綾乃さんがいなくなって咲良さんになった時、大丈夫かってブツクサ言ってたじゃない!」 「あれはあんな形で結婚になってしまった二人の今後が心配で言ってただけだ。パーティーで息ぴったりだった二人を見て私は安心したんだよ、離婚させようなんて思ってもなかった」 「そんな。見て分からなかったんですか、二人はまだ夫婦として完成してなくて」 「あんな形で結婚したのに、たった数ヶ月で夫婦が完成するはずないだろ。二人のペースでゆっくり作り上げていけばいいんだ、少なくともパーティーの時、二人からそういう意志を感じ取ったんだよ私は! お前はわからなかったのか?」  母は悔しそうに唇を噛んだ。きっと夫は自分の味方をしてくれるに違いないと思っていたらしい。確かに、うちの家庭の力関係はどちらかと言えば母の方が強かった気がする。父がこれほど怒鳴るのも珍しいのだ。  父は大きくため息を吐く。 「それに。咲良さんのおかげでうちの会社は大きな利益を得るかもしれない」 「え?」  父は今度は私の方に向き直った。普段通りの落ち着いた声色で、少し口角を上げて言った。
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