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「蒼一。あのプロジェクトだが、信じられないことに向こうから是非うちとやっていきたいと連絡が来た」
「なんだって?」
「それを連絡したくてずっと今日電話してたんだが」
私は驚きで瞬きすら忘れた。父が言っているのは、以前から長いこと取り組んできた大型プロジェクトのことだった。付け加えるならそこにいる新田茉莉子も携わっているものだ。
うちよりもずっと大企業である会社との取引を持ちかけ、プレゼンを進めていた。が、正直なところかなり難しい状況で、ライバル会社に負けてしまう可能性もあると密かに思っていた。それがここにきて急になぜ?
隣でキョトンとしている咲良に、早口でそれを説明した。しかし、咲良のおかげ、という点は私もまだ理解が追いついていない。
父は穏やかな表情で咲良を見、説明した。
「咲良さん。以前うちの創立記念パーティーで、車椅子のご老人と話したのを覚えてますか?」
「え? ああ、はい。少しだけですが、確かにお話しました」
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