10.蒼一の答え

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 私たちは無言で咲良に注目した。当の本人は、視線を集めたことが恥ずかしかったのか困ったように狼狽えている。父はそんな咲良を目を細めて見ながら続けた。 「もちろんうちの会社のプレゼンも気に入っていたみたいだけどね。プレゼンの内容も踏まえ、咲良さんの言動が決め手になりうちでよろしく頼みたいと返事が来た」 「私は特に何も……。お仕事を頑張った方々のおかげだと思います」 「いいや、会長はとても喜んでいたようだよ。権力のない者にも気が配れる人間が上にいる会社は伸びる、と断言されたようだ」  私は感嘆のためいきを漏らした。普段から優しさで溢れる彼女の行為が、こんな形となって返ってきた。喜びと感激で胸が震える。  父は再度母に向かって言った。 「咲良さんが蒼一をフォローするには弱いって? 彼女のおかげでこうなったんだぞ。なんか他に言いたいことはあるか?」
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