10.蒼一の答え

17/20

6895人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
 家に入る前に、二人夕飯を買うためにコンビニに寄った。いくらか過ごしてきたが、咲良とコンビニで買い物をするのは初めてのことで新鮮だった。  もうほとんど売れてしまいスカスカになった戸棚から、咲良はサンドイッチとおにぎりを選んで購入した。私は適当に弁当を買う。片手にビニール袋をぶら下げて、手を繋いだまま家へ向かった。  帰宅した後、リビングで向かい合ってそれを食べた。温かな手料理でもないのに、それはとても美味しく感じる。ちゃんと夫婦と呼べるようになってから初めてとる食事だからだ。  何となく無言で食事をとり続けた。咲良がサンドイッチを齧る姿がひどく愛おしくてならない。そんな自分の気持ちを落ち着けながら、まずは大事なことを考えなくては、と思った。  静かなリビングで、私は目の前の唐揚げを転がしながら咲良に言った。 「両親のこととか、会社のこととか。何も気にすることはないよ。実際のところ、僕一人がいなくてもどうにでもなる」  そう告げると、彼女の食べる手が止まった。私は続ける。 「母を許さなくていい。僕だって許すつもりはない。二人でこのままこっそり家を出ればいいと思う」
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6895人が本棚に入れています
本棚に追加