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咲良は優しい。優しくて、時々自分を蔑ろにすることもある。もうそんなことをしてほしくなかった。
彼女が思うようにしたいと本気で思う。全て捨てようと決意したのは他でもない私なのだ。知らない土地で、一から始めればいい。それが一番スッキリするし最善だと思っている。
咲良は真っ直ぐ私の目を見た。そして言う。
「蒼一さんが会社も辞める、って言ってくれたこと、すごく嬉しかったです。そうなるなら私も全力で支えたいと思っています。
でも、お父様があれだけ言ってくださったんですから、様子見してもいいと思うんです」
私はじっと咲良を見つめる。彼女は目を逸らさなかった。
「それでいいの? 僕は離れた方がいいと思うよ」
「お父様が私たちの味方でいてくれたことは嬉しかったです。もう少しこのままでいたいと思ってます」
「気を使ってない?」
「はい、本当につかってません。
私、仕事に打ち込んでる蒼一さんを見るのも好きなんです。今まで培ったものを捨てるのも勿体無いと思う。もうお互いの誤解は解けたし、私たちは大丈夫だと思います」
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