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背筋をしっかり伸ばして言う咲良の言葉からは、偽りは感じられなかった。
私だけではなく父も目を光らせれば、母ももう下手なことはしないだろうとは思う。が、100%とは言えない。それに新田茉莉子のこともある。
私は箸を置いて言った。
「約束してほしい。もし今後何か少しでも何かされたら、全部僕に言って。隠したり誤魔化したりしないで」
「……はい」
「僕も、もう逃げたりしないで何でも言う。ちゃんと向き合うから。
ここから逃げることはいつでも出来る。咲良ちゃんが嫌だと思ったときがそのときだ。我慢は何一つ必要ない」
私の言葉に、彼女は優しく微笑んだ。そして嬉しそうにサンドイッチを頬張る。なんだか小動物みたいなその様子に、こんな時だと言うのに頬が緩んでしまった。
「嬉しいです。蒼一さんがそう言ってくれたことが、何より嬉しいです」
「……無欲だね」
「そんなことないです。好きって言ってもらえたことで気分が昂っちゃってるだけです! 夢かな、とか思っちゃったり」
「夢かなと思っちゃうところは僕も同感だけど、ちゃんと現実だから。ね?」
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