6896人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
「すぐにここは引っ越そうと思う」
お風呂から上がり、久々に入る蒼一さんの寝室でベッドに腰掛けて待っていた。彼も入浴を済ませ、部屋へ入ってくる。どきりとした私をよそに、隣に腰掛けた蒼一さんは第一声にそう言った。
「え?」
私は聞き返す。彼はまだ毛先を少し濡らしたまま言った。
「ここはあまりにうちの家と近すぎる。新田さんも知ってるし。だからすぐにどこか引っ越そう」
「すぐにですか?」
「本当はマンションとか、家とか買って引っ越すのが一番なんだけど、選んでる時間もないからね。どこでもいいから賃貸を借りて引っ越す。明日にでも探しに行こう」
真剣な目でそう言ってくれた。まさかそんなことを提案されるなんて思ってなかった私は驚く。蒼一さんは眉を顰めて言う。
「もう二人には絶対接触しなくていいから。あれで懲りたといいんだけど。そうだとしても、顔見るだけで気分悪いでしょ?」
「そ、そんな」
「僕は気分悪いよ。まあ、僕が言うなって話なんだけどね。僕が一番咲良ちゃんを傷つけてたから」
少しだけ視線を落として蒼一さんが言った。その切なげな表情を見て、私は強く首を振る。
最初のコメントを投稿しよう!