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「そんなことないです。私も気持ちを隠してたのがいけなかったんです」
「ううん、あまりに馬鹿だった。早くちゃんと自分の気持ちを伝えてればこんなことにならなかった。謝っても謝り切れることじゃない」
そう言った蒼一さんは、揺れる瞳でこちらを見た。そして真剣な声色で言う。
「自分でも知らなかった。こんなに臆病だったなんて。仕事だって人間関係だって、今までそれなりに軽くこなしてきたつもりだったのに、一番大事な時にだめだった。
これからはもうちゃんとする。絶対にもう咲良ちゃんに悲しい思いはさせない」
あまりに強い視線で見つめられ、私は動けなくなった。
私にとって蒼一さんは大人でいつでも余裕があって、そんな彼が自分を臆病だと言っているのは驚きだった。でもなぜかそんな言葉が嬉しい。
早くなっていく心臓の音を自覚しながら、私は小さく頷いた。そして答える。
「ありがとうございます……。臆病なのは私も同じです、蒼一さんと同じように、これからはちゃんとします。蒼一さんこそ、何か不満があったらどんな小さなことでも言ってください。必ず直します」
「不満なんて」
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