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驚いたように目を丸くした蒼一さんは、すぐに考え込むように唸った。そして何かを思い出したような表情になると、立ち上がり私の正面に立った。彼の顔を見上げると、私の手をそっと取る。
「不満じゃないんだけど、一個聞いておこうと思ってた。なんで蓮也くんの家にいたの?」
「え」
蒼一さんはどこか困ったような顔をしていた。私は慌てて説明する。
「朝たまたま会ったんです……! 私の様子を見て心配してくれて、家に来ていいよって。実家に帰って色々聞かれるのは辛いなと思ってたから、彼の言葉に甘えたんです」
「ふうん……」
「あ! あの家は蓮也の一人暮らしじゃないですよ、朝はお姉さんもいて。夜にはバイトから帰ってくる予定だったんです」
私の説明にも、どこか彼は不満そうな顔をしていた。怒っている、とはまた違う顔だ。悲しげで拗ねたような顔で、そんな蒼一さんの顔は初めて見る気がした。
「何してたの?」
「お茶して、あとは眠くて私は寝ちゃってました」
「……ふうん……」
「…………あの、もしかして、妬いてくれてますか?」
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