11.二人の未来

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 そしてそのキスが首に降りてきた時、自分の体が跳ねた。それでも彼は肌から離れず、小さく囁いた。 「咲良」  ふわりとシャンプーの香りがした。同じものを使っているはずなのに全然違う香りに感じる。自然と自分の目に涙が浮かんできた。 「たくさん傷つけた。本当にごめん。  でも、私は絶対に君以外を好きにならない。それだけは信じていて」  ついに、自分の目から涙がこぼれ落ちた。  私は知らなかった。  好きな人の瞳に自分が映ることがこんなにも幸福だなんて。  押し潰していた自分の気持ちを受け取ってもらえることは奇跡みたいなことで、努力だけではどうにもならないこともある。  子供の頃から夢見ていた彼の隣が、本当に私の居場所になる日が来るとは思ってなかった。    私の様子を見ながら、彼は優しく肌を撫でた。そして何度もキスを重ねた。そっと触れてくれるそれは、まるで宝物を触る子供のようだと思った。  蒼一さんが触れた瞬間、そこの肌は熱くなる。それは初めて命を持ったようだった。くすぐったいような、心地いいような不思議な感覚に包まれて、私はもう何も考えられなくなっていた。
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