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「大丈夫?」
ふいに蒼一さんが顔を上げて気遣いたずねた。私は彼を見あげながら声も出せずに頷く。またしてもいつのまにか流れていた涙を、蒼一さんが指先で拭く。
「なんか、体ガチガチ」
「緊張は、してます。だって今まで手をつなぐぐらいで必死だったんです。ぎゅっとするのでさえ死にそう。でも、これは嬉し泣きです」
「そっか、嬉し泣きか」
「だから、大丈夫です」
小さく蒼一さんが笑う。私の髪を優しく撫でた。
子供の頃もよく頭を撫でてくれたけど、その時とはまるで違う感覚。私はぼんやりと蒼一さんの顔を見上げた。バチリと目が合うと、彼はおもしろそうに言う。
「髪。触るの好きなの?」
「え?」
「さっき何度も僕の触ってたから」
「好きっていうか……触ってみたいな、って思ってたから」
そういうと、彼は突然ふざけたように私の肩に頭をぶつけた。髪の毛が触れてくすぐったくなる。私は笑った。
「どうぞ、お好きなだけ」
「あは、どうぞって言われるといらないです」
「いらないって。急に冷たいじゃん」
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