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慌てて起きあがろうとした私の腕を引っ張り、彼は再びベッドに寝かせた。私は恥ずかしさで顔を熱くしながら非難する。
「起きてたなら起こしてください、もしかして寝顔見てたんですか!」
「うん、せっかくだからしっかり観察しといた」
「もー! やめてください、絶対不細工な顔してたし」
「可愛かったよ。よだれ垂れてたのがとくに」
「前もそんなこと言っ……うわ、ほんとだ」
口の端を触ってみたら本当に濡れてたので慌てて拭いた。そんな私をみながら彼は声を上げて笑う。私は軽く睨んで見せた。いっつも蒼一さんばかり余裕なんだから。
「今度は絶対私が先に起きて蒼一さんの寝顔観察しまくります」
「はは、恨まれた。ずっと見てたわけじゃないよ、ちょっと僕の方が早く起きただけ。起こそうかなーと思ってたら咲良ちゃんが起きたから」
目を細めながら私を見てくる。たったそれだけの光景に、つい胸が苦しくなった。
初めの頃一緒に寝てた時はお互い背中を向けて、いつもどっちかが先に起きていた。こうしてお互いの顔をみながらふざけるなんて、一度もしたことがなかったのに。
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