11.二人の未来

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「詳しいことは知らないけどさ。  あの人、いつもビシッとしてて大人な感じなのに、あんなボロボロの格好で余裕ない顔してたんだから、そりゃ俺でも勘づくよね」  彼の言葉を聞いて思い出した。昨夜私を迎えに来てくれた蒼一さんのことを。  確かに普段とはまるで違った蒼一さんだった。服装も髪型も乱れて、いつもなら礼儀正しいのに余裕なくあそこから立ち去った。普段とはだいぶイメージが違ったかもしれない。 「聞いた話だけど、どっかで高校の名簿でも入手したのかな。咲良と仲良い友達とか電話して話聞いたり、連絡つかない人はああやっていろんな家回って探してたらしいよ。んで俺のところにも来た、と」  そうだったんだ……と、初めて知る事実に驚いた。確かに、行き先は誰にも告げなかったしどうして蓮也の家がわかったんだろうと思っていた。ずっと前からいろんな友達のところを探し回っていたんだ。  蓮也は優しく微笑む。 「うまくいきそう?」 「……うん、ちゃんと話した。私の気持ちも伝えて、蒼一さんの気持ちも伝えてもらった」  蓮也にこんなことを言うのは何だか心苦しかった。でも隠すのはもっと残酷なことなので、私はしっかり彼の目を見て告げた。
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