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蓮也も視線を逸らすことなくじっと私を見ている。いつだって私に正直にぶつかってきてくれた彼のそんな顔を見るのは、何だか辛かった。
蓮也が何度か小さく頷く。
「……そっか、そうだったのか。よかった。俺、余計なことしちゃったりしたかも。蒼一って人にも謝っといて」
「え?」
「咲良」
蓮也が低い声で私を呼んだ。つい無意識に背筋が伸びるような呼び声だった。彼はわずかに口角を上げて、私に伝えてくれた。
「本当に、好きだったよ」
真っ直ぐ言ってくれたそんな言葉を聞いてぐっと胸が苦しくなる。なんて答えていいかわからなかった。なぜか私が泣きそうになったのを必死に堪える、私が泣く番なんかじゃない。
昔からずっと仲良くしてくれた唯一の異性の友達だった。幼馴染みたいな感じでずっと隣にいたけど、そんな彼の気持ちに気づかなかった自分の鈍さが憎い。
私にくるりと背を向けて立ち去ろうとする蓮也に、慌てて声をかけた。
「蓮也、ありがとう!
いつも話聞いてくれて……背中を押してくれたから。感謝してる。本当にありがとう!」
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