11.二人の未来

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 幸いだったのは、前の家ですら三ヶ月ほどしか住んでいなかったので、私も蒼一さんも荷物が増えていないことだった。荷造りもそんなに大変ではなかったのだ。  まだ閑散としているリビングを見渡す。さて、あとは荷解きだ。私は腕まくりをする。  マンションは前の家よりずっと狭い場所だった。なので、以前使っていたソファなどが入らなかったのだけは問題だった。新しいのを買うしかない。  蒼一さんが言う。 「だいぶ狭いけど、ごめんね」 「いえ! 全然です。むしろこれくらいでちょうどいいなあって思ってます」  私は心の底からそう言った。むしろこの狭さは結構気に入っている。呼べばすぐに相手の声が聞こえ、手をのばぜばすぐに触れられるぐらいの距離。二人で暮らすにはいい広さだ。前のところは広すぎた。  蒼一さんが腕を組んで考え込む。 「うーんソファは買わなきゃだね。ま、急ぎじゃないから今度行こうか」 「そうですね。ソファはなくてもなんとかなりますから。ゆっくりでいいと思います」 「ああそれと。当然だけど、ここの新しい住所は母には伝えないからね」
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