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緊張をほぐすためか、人なつこく話しかけてくれる。私は笑顔で答えた。入念にトリートメントした毛先を触りながらメイクさんは言う。
「お二人は幼馴染って伺いました。素敵ですね」
「あは、そうなんです。まあ色々あったんですけど」
「そうなんですか?」
「はい(めちゃくちゃ色々です)」
ここで説明するには時間が足りないほど色々あった。まず、お姉ちゃんの昔からの婚約者だった……というところから始めなければならない。絶対にタイムオーバーするので濁しておこうと思う。
メイクさんはふふっと笑って言う。
「色々あったけど、結局お互いが選んだのは自分達なんですから。その結果が全てですよ」
そう優しく言われ、私は微笑んだ。
確かにその通り。今ここにいるという事実が全て。
幼馴染と一言で片付けるには、私たちの時間はあまりに長い。
「さ、メイクは完了です、ドレスにお着替えしましょうか」
「はい」
立ち上がり、掛けてあったドレスを見た。数多くの種類で悩みながらようやく選び抜いた一着だった。蒼一さんも似合う、と太鼓判を押してくれたのでこれに決めた。
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