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長い髪を揺らして彼女は笑う。そして力強い声で言った。
「幸せになってね、咲良」
私は何度も何度も頷いた。姉は立ち上がり、やや睨むようにして蒼一さんをみる。
「蒼一は大人なように見えて肝心な所抜けてるからねー。意外と咲良の方がしっかりしてるかもよ。ほんと、ちゃんとしてね蒼一」
「……言い返せないな」
困ったようにして呟く蒼一さんについ笑った。そう、二人ってこんな感じだった。私はそんな光景を小さい頃からずっと見てきたんだ。
蒼一さんがぐっと胸を張る。そしてしっかりした声で言った。
「もう間違わない。これからは咲良ちゃんを悲しませないって約束する」
真っ直ぐ言い切った蒼一さんを見て、お姉ちゃんは微笑んだ。そして一つ長い息を吐くと、私に振り返る。
「参列してもいい?」
「もちろんだよ! 嬉しい!」
即座に返答した私に笑いかけると、お姉ちゃんは出口に向かっていく。ドアを開けながら声だけ響かせた。
「安心したわ。これからはほんと、ちゃんと夫婦になってね」
そう言い残した姉は、外へと出ていってしまった。
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