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本田つかさについて語ろう
それでは説明しよう。
本田つかさ。一年特進コース担任。専門は数学。年齢は二十七歳。
生徒のことを真剣に考えている真面目な先生。ボブの黒髪に優しそうな表情。
白のブラウスに黒のカーディガン、黒のスカート。ミニスカートからは、ダークバークかダークブラウンのストッキングを履いた美脚がのぞいている。スラリとした長さ。そして流れるような曲線が、ストッキングのカラーに、まさしくピッタリ合っていた。
そして……。
気の弱さがハッキリ分かる涙目の表情。ドキドキすると、いや! しなくても滑舌が悪くなり意味不明瞭と化す。
そしてそしてそして!(強調)
何事につけて要領が悪い。
そうなると目を見張る美人だということは忘れられ、
「授業が下手。これでは自習した方がベターだ」
「質問は数学主任の都築先生に聞こう」
「ホームルームの連絡、もっと分かりやすくしてくれよ」
「日本語しゃべれよ。日本語!」
生徒の不満が急上昇。
同僚教師たちからは、
「わざわざ問題の少ない特進コースの担任にさせて貰えたのに、何やってるんだ」
「来年からはまた担任はずされること間違いない」
と大声で、つかさにハッキリ聞こえるように噂されていた。
そしてそしてそして!(再度強調)
授業やホームルームでは、クラス委員の優等生、PTA会長の娘でもある結城美沙子からミスや不十分な点を何度も指摘される悲しい運命を送っていた。
授業の進め方のまずさを指摘される。
ホームルームの進め方のまずさを指摘される。
父親が新聞社の重役である美沙子の理路整然とした主張。
その度につかさは、
「すみません。ごめんなさい」
と繰り返すしかなく、今日の授業では何度「すみません」と言ったかが、生徒たちのひそかな話題になっていたのだ。
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