便利屋探偵

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華やかで賑やかな夜を楽しむなら、この大歓楽街、ホシミノが打ってつけの街だ。今夜も灯り続けるネオンの光。それに群がる虫のように、今日もこの街に人々が集まり、それぞれの思惑が渦巻く。そんなネオンの光が眩しいほど、その影は暗くなる。 この街を牛耳っているのは、関東を含め、この北海道までの裏社会を支配している巨大なヤクザ組織、『東征会』。 このホシミノという街は、ディープな場所ほど刺激的だが、その分、危険も多い。 そんな街で、彼、久利生一馬は『便利屋探偵』をやっている。元々は高校教師であったが、“ある事件”をきっかけに教壇から降り、この街へ転がり込んだのである。『便利屋探偵』と言っているだけあって、その依頼内容はさまざまで、物騒な借金取りの手切れを手伝ってほしいなんてことや、法外な利息を取ろうとする金貸しを懲らしめてほしいなんて危ないものばかりであった。 そんな久利生は、ホシミノにある多くの雑居ビルの二階の非常階段から必死になって駆け降りていた。その後を屈強で強面、スーツに身を包む男たちが七人、怒号を放ちながら追いかけていた。季節は冬で、外は連日続いた雪のせいで路肩には雪山があって、道路は踏み固められた雪でツルツルと滑ってしまうほどであった。 階段を降り切って、この裏路地から大通りに向かって出ようとした時であった。ついに久利生はその男たちに追い付かれ、羽交締めにされてまた路地裏に引き込まれていった。何度か殴られてから、リーダー格の男が大きなカバンから札束をひとつ手に取って久利生に見せ、パラパラとそれを本のページをめくるようにしながら、途中から丁寧に切り揃えられてすり替えられていた新聞紙を見せつけて、「こんなんじゃ全然足りねぇなんだよ、探偵さん」とドスの効いた声で話したのである。
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