さよならの向こう側

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 私はナツ。  人が嫌いでコミュニケーションをとることが苦手。生きることに不器用だ。  それでも私は、生きていく。  泣いたり、笑ったり、怒ったりしながら、極東の小さな島国で生きていく。  いつか必ずもう一度、自分が会いたい人たちに会える日を心待ちにしながら生きていく。    海が見える坂道を思い描きながら、コンクリートの坂を駆ける。  満点の星空が広がる海岸を思いながら、星の見えない街を抜ける。  開けるとギィッと音がする手動の扉を思いながら、自動ドアをくぐる。 「いらっしゃいませ」  丁寧にお辞儀をする店員がいるレジカウンターまで足早に進む。肩で息をしている私を、店員が不思議そうな顔で見ている。 「クリスマスカード売り場はどこですか?」  私が送るクリスマスカードを彼らはどんな顔で見るだろう。  反応が、楽しみだ。
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