【No.38】片想い

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「アンは器量よしじゃけん、幸せになれるが…」 今はもういないおばあちゃんに、そういつも言われて大きくなった。          それなのに…       不幸なことしか起こらない。 おばあちゃんは    アタシが10歳の時、病気で亡くなった。     おじいちゃんはアタシが8歳の時。 人の人生なんてものはどこでどう変わるか予想もつかないもの。アタシの場合も決して例外なんかではなかった。 友達の中にもいきなり父親の会社が倒産してある日突然いなくなった子とか…そんなの何度も見てきた。 自分には関係ないのだと、どこか他人事のように思っていたのに…。 アタシは如月杏珠(きさらぎあんじゅ)、           中途半端な26歳。 みんなからは『アンちゃん』と呼ばれることが多い。 高校までは旭川で過ごし、大学は仙台の大学に行き、卒業後は旭川市役所の公務員試験になんとか合格にできた。まあ田舎の公務員二次試験はコネ勝負。 親戚に市の副市長だった叔父さんがいるから、一次さえ通過すればまず間違いはなかった。
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