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<PROLOGUE/撃砕雷霆>
イギリス、ウェールズのグウィネズ州にあるスノードン山の麓で、巨大な結界の帳が降ろされた。現実世界から隔絶され、如何なる被害もここで収束させるべく、一人の魔女が奮闘する。
ショートカットで赤毛の混じる黒髪の魔女の首に掛けたペンダントが、キラリと光る。
金と銀、鋼に水銀、特殊な製法で作られた合金は、金型ではなく削り出しの土台。赤い宝石をその土台で挟み込むようにして取り付け、骨董魔具の鎖を再利用して穴に通して、首に掛けていた。
走るたびに揺れる鎖が首を刺激する。けれど、その刺激は集中を欠くことはない。けれど、心做しか気持ちが高ぶる。
気持ちは前向きにならなければ、判断が鈍る。判断が鈍れば、命を削る。命を削れば、その先はない。
「わたしがあれを止める。ジューダス、トドメは君に任せるよ」
手のひら大の小型拳銃に魔力を通す。内部で錬成される弾丸は、神話を再現するに値する一品。いかなる魔術的現象をも撃ち抜く"弾貫"の性質は、魔弾となって空間を貫く。
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