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Paragraph 9/輪廻の蛇/Annulus
――日をまたぎ、深夜になった。
影の影響が出た鈴蘭は、トンネルから離れることで影は鳴りを潜め、それに引っ張られる形で鈴蘭自身も眠りについた。後部座席で横になり寝息を立てているが、その内部からは未だ黒い影の気配が蠢いている。
沖縄中南部の西海岸沿い。夏喜の咥えるタバコの煙は海風に溶ける。全身を包むは潮の匂い。傍らに立つジューダスが眺める水面には、反射する月明かりが静かに揺れていた。
「おまたせしました。遅くなってしまい申し訳ありません」
琉装姿ではなく、普段着を召した麗蘭が姿を表す。暗めのサイドスリットワンピースの下に、色落ちのした薄い色のスキニーパンツ。強い海風が身体を冷やすのを防ぐために厚手のストールを羽織っていた。
「わたしが着替えておいでと言ったんだ。君が謝罪することではないよ」
深い宵闇を月明かりが照らす。満月とはいかないが、それでも月は星々の輝きを奪うほど大きい。
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