Paragraph 9/輪廻の蛇/Annulus

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 その後、被害届を出し、男の身元は判明した。が、麗蘭の抵抗がなかったことから不起訴となり、彼女1人がさらなる苦痛を背負うこととなった。時代が違えば、彼女の苦しみは多少なりと緩和されていたのかもしれない。けれど、当時の警察関係者は彼女の混乱をなだめることはなく、1人で夜道を歩く本人が悪いといさえ言う者もいた。多くの問題がある中、そのような状況であれど、宿った命に罪はないと、父親となる存在を麗蘭の中に封印することで鈴蘭を出産することとなった。このことで、より麗蘭の合意のもとという認識が広まり、男は無罪放免となった。 「――当時と現在では、見方は変わっていたのかもしれません。ただ、時代が法に追いついていなかったと思っています。けれど、天罰はありました。わたくしに乱暴を働いた男は、後日事故により亡くなったと。報道もされていたのでこれは事実でございます」 「苦しい過去を話してくれてありがとう。やはり、ようだ」
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