11人が本棚に入れています
本棚に追加
「どういうことでしょうか」
夏喜は麗蘭の疑問の表情を見て、車の中で眠る鈴蘭の顔に視線を移す。親子だけあって似ている。肌は焼けているが、若い頃の麗蘭も同じような顔をしていたのだろう。
「確認したい肝心なことだ。君は、――他にも身籠っていなかったか?」
「・・・・・・気付かれて、しまったのですね」
「ええ。初めはわからなかった。けど、鈴蘭の恐怖心に反応する『彼』は、もしかしたらと思ってね。君には、影がなにかずっとわかっていたんだろう」
鈴蘭を覆う影。夏喜のように娘の寝顔を眺める麗蘭だが、その視線はどこか透けている。
「バニシング・ツイン。あの時、わたくしは双子を妊娠していたようです。ですが、妊娠初期に1つの胚はわたくしの子宮から消失していました」
最初のコメントを投稿しよう!