Paragraph 9/輪廻の蛇/Annulus

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 麗蘭としての不幸は、自身が招いた現象に娘を巻き込み、それでいて自身で解決できない状況にある。母親としての立場より、仕来りを優先しなければいけないジレンマこそが彼女の最大の不幸であると自覚していた。 「それは違うぞ、麗蘭。『彼』は母を護り、そして鈴蘭が生き残るように護っていた。それを不幸というのは、『彼』が救われない。宿った命に罪はないと、そういったのは君だ。なら、『彼』の存在は、君が望んだものだ。だからこそ、それを否定してはいけない。それが、なら尚更だ」 「・・・・・・そうですね。夏喜様の言うとおりでございます。名前どころか、戸籍すら存在しなくとも、確かにわたくしの中に宿った命の1つです」 「ナツキ。お前は影がレイランを護ったと言ったな。それはどういうことだ」  黙って話を聞いていたジューダスが口を開く。ジューダスには、夏喜ほど事の全容は読み取れていない。
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