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「よし。結界の中心で手を組んで座って。あ、お花を摘むなら今のうちよ」
「い、いかないし! 来る前にすませたし!」
最後に鈴蘭を茶化して結界内へと見送る。まだ若い鈴蘭は大人の茶化しに動揺するが、夏喜からすれば緊張を緩和させる意図があった。今から始まる儀式はぶっつけ本番の一発勝負。お互いに失敗は許されない。
人を呪わば穴二つ。その逆も然り。祓う行為の失敗は、呪詛返しによる実害がある。そのためにも、夏喜の気遣いは重要であった。
結界の中心で鈴蘭が佇む。淡い微光を放つ結界線。霊場とは魔力の壺。結界を介して現実世界で知覚化される現象に、鈴蘭は驚きを隠せない。
「おーい。準備はいいか~」
夏喜の声を聞き、慌てて手を組んで膝を付く。奇しくも祈りの形となった祓いの儀式が始まる。
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