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Paragraph 11/解呪ノ儀(2)/It's All Over Now, "Black Lily"
「――左手に秤、両皿を満たす善悪、
黄金に白銀と鉄を較べて星の如く輝く、――
――右手に剣、黄金の夜明けに十一、
大天使の裁きをパピルスに示せ――」
夏喜が結界線の外周に立ち、右手に本を広げて呪文を紡ぐ。徐々に光量が強くなる結界の中心で、鈴蘭は動くことなく手を合わせた。
目を閉し、口を噤み、耳を塞ぐ。目は光を遮断し、口は声をひそめ、耳は音を黙殺する――実際には全てを取り払うことは生きている以上出来ないことではあるが、身体を屈め、手を合わせることで身体が反応することを抑制することで完成する。
「――母なる大地、父なる神、
蓋を開き、地より登りて、天に至れ、――
――日神の酒、水神の盃、宵神は水を汲べ、
二線の星をかすめ、岩戸を開けよ――」
鈴蘭の背後に浮き上がる影。消えたはずの片割れ。望まれなかった命の成れの果て。けれど、一人の少女を護るための装置として憑いた存在が、結界の中で形を成そうとしていた。人の影を立体化したような姿ではあるが、心做しか、鈴蘭や麗蘭の面影を感じていた。
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