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「どうした。来なよ、ブギーマン。それともブルっちまったのかな」
「――」
荒野のガンマンのように、相手の出方を待っていた。木々を揺らす風の音だけが木霊し、――影が腕を伸ばした瞬間、夏喜は重心を下げた。
初めに動いたのはどちらだったか。影よりも深く潜った夏喜はそのまま体当たりをし、腰あたりを持ち上げ、地面に叩きつける。
が、地面に叩きつけられると同時に影は虚像化に転じた。虚像化したものに対する干渉はいかなる状況でも不可能となる。
影が滑るように夏喜の背後に動いて再び実体化と、その腕は夏喜の足にまとわりつき、軽々と女の身体を持ち上げて振り回した。
「づっ――!」
乱暴に鈍器を振り回すように夏喜の身体で数度地面を殴りつけて放り投げる。頭だけは守っていたが、骨が軋む痛みに思考が飛ぶ。
倒れる夏喜の顔を覗き込むようにしたところで、目を開いた夏喜は身体を回転させて影の足を払った。影が体勢を直す隙に距離を取り、全身のダメージを計算する。
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