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銃口は向けない。女性の手の平にすら収まるサイズの拳銃だが、グリップ部分にはめ込まれた宝石が僅かに光る。
重心を低くした夏喜に対し、影はゆらゆらと揺れていた。実体と虚像を転化できる影には物理的な攻撃は意味をなさない。触れようものなら絡め取られるだろう。その相手が、予備動作もなく胴体から影を伸ばした。
「いっ――!?」
背を反らして回避する。体勢がズレた魔女に対し、二撃目の影が迫り、接触の瞬間、右手の甲で弾いた。本来ならば、影がその気ならば触れた右腕は掴まれる。だが、右手が弾いた影は形態を崩壊して破裂した。身体を捻り体勢を立て直した夏喜が距離を詰める。
追撃の三撃目――地面から針山のようにせり上がる影が夏喜の胴体を狙った。躱された一撃目の影も背後から迫る。前と後ろの挟み撃ちは、魔女があと一歩出れば回避行動は間に合わない。前方からの鋭利な攻撃を受ければ致命傷は免れない。
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