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夏喜の意向を尊重して静観していたジューダスは危険だと判断し、介入することで儀式が失敗することも理解した上で突入しようとした。刹那――
彼の視界から魔女の姿が消えた。
夏喜の前方から迫りくる影が接触する瞬間に、幻影のように消失し、
「――『金色鎖縛』――!」
影の背後を、虚空から出現した魔女の左の拳が捉えた。
影の動きが鈍る。殴られた衝撃で身を捩り、その状態のまま動かない。虚像化も、新たな攻撃もなく、空間に貼り付けた影絵のように停止している。
「これでどうだ!!」
次に、デリンジャーを握りしめた右の拳を振り抜き、――影の身体が破裂した水風船のように弾け飛んだ。
彼女が右手に握りしめているデリンジャーの性質は、あらゆる物を撃ち抜く『弾貫』にあり、神話上の魔弾である"タスラム"とすら称されていた。
その能力を、術式の拡張することで自らの右手にそれを体現させている。相手がいかなる状態であろうと、彼女の拳に殴れないものはない。
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