Paragraph 12/ドリーム・スタッキング/Love Is Over

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 その中で1人だけ、見覚えのある少女がいる。半日前に顔を合わせた、ストレートパーマをかけた茶髪の子――鈴蘭の友人であるA子の姿があった。  傍から見ても、彼女らの行動は不審に映る。何かを隠す仕草は容易に想像がつく。あたりを見渡す視線や表情には焦りすら見える。  そこに、もう1人見覚えのある少女が通りがかった。程よく日に焼けた褐色の肌、染めてからかなりの時間が経った髪色、赤いピアスと青いカラーコンタクトに薄く塗ったグロス。夏喜が初めて遭逢した日の鈴蘭の姿がそこにあった。  その鈴蘭を視認したA子の表情が変わる。恐怖。わかりやすいほどの感情をさらけ出していた。出会い頭に何かを叫び、その様子に鈴蘭は困惑している。  集団の中の1人が棚から瓶に入ったオーガニックオイルを取り上げ、鈴蘭に目掛けて投げつけたとき、目を疑う事が起きた。  理解の範疇を超えた出来事として、ひとりでに大きな棚の1つが倒れた。誰の眼にも不自然に、けれど確実にそれは起こった。
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