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地面から湧き上がる何か。本来なら、霊感のない人ならば視認できることはないだろう。トンネルの真ん中で佇むそれが、接近してきたE助をバイクごと壁に叩きつける。
速度が乗っていたバイクから投げ飛ばされたE助がトンネルの壁面に激突し、衝撃で全身の骨が砕け、内臓に突き刺さる激痛で意識を失いかけた身体に、遅れてきた車体が突き刺さった。
耳を塞ぎたくなる音とともに、壁に血が飛び散る。壁とバイクに挟まれたことにより、おそらく彼はそのまま帳を下ろしたのだろう。動くことなく、激突によりちぎれた下半身が地面に落ちた。
――凄惨な事故の場には、すでに影はなかった。人通りの少ない場所でも、聞き馴染みのない不快な轟音は、誰かの耳に届いていた。
――カチリ。
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