Paragraph 13/解呪ノ儀(3)/Lost Child

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 鈴蘭には、人影の怪異が取り憑いている以外、普通の女子高生と変わりない。夏喜のように魔法の一端に触れてきたわけでもなく、母である麗蘭のように特異的な力を持たない。  彼女には、ノロとしての才能がなかった。だからこそ、この影の氾濫で流れ込む情報量の中では意識を保てない。 「みつ、けた――!」  暗闇に左手を伸ばし、指先に感じた鈴蘭の腕を掴む。流れに負けぬよう引き寄せて抱き、右手の中で握っているデリンジャーに魔力を集める。 「ぐっ――!」  突如背中に感じた衝撃。まとわりつくような感触は、影が夏喜を取り込もうとしていることに他ならない。背中から肩と腰に広がり、四肢の動きを阻害しようと蹂躙する。  ――甘いッ! それは初手で潰してるッ!  夏喜のインナーに刻んだルーン文字が励起した。それにより、魔女を取り込もうとした影が弾かれる。 「――っどぅりゅあああ!!」  インナーのルーン文字とデリンジャーを接続し、鈴蘭を抱きかかえた夏喜を中心にして周囲の影を消失させた。放射状に消えた影が、デリンジャーの"弾貫"の性質により破壊されている。溢れかえっていた影の脈動が沈静化し、黒い球体へと変化した。
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