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夏喜の指摘通り、麗蘭はノロとして正式に襲名するために必要な儀式を経験していない。だからこそ、彼女の行動自体を咎める理由がない。形はどうであれ彼女の選択は、今回の問題においていい方向に進んだと夏喜は捉えていた。
「事情も形式も、母と子の繋がりの前では穴だらけさ。すべてを投げ捨ててでも、その関係だけは壊しちゃいけない。わたしの友達にもそういう家族がいるよ。だから、君たちに出会えてよかった」
親子の形は人それぞれであり、それでもそれを維持しようとする気概は重要である。
子のためにすべてを捨てる親がいれば、子のためでも仕来りに縋ろうとする親もいる。
その中で見つけた親子の姿に、夏喜は自分に足りないものはなんだろうと考えていた。
「報酬の件は仲介者に通しておいてくれ。なあに、雑費はこっちで処理するよ。なんせ、わたしにはいくらでも出してくれるパトロンがいるからね」
じゃあねと、手を上げて出発保安検査場へと歩みを進めた。しのぶ別れもさっぱりと、見送りに来た2人があっけを取られる。
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