Paragraph 14/ナンクルナイサ/Qué Será, Será

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 夏喜の指摘通り、麗蘭はノロとして正式に襲名するために必要な儀式(イザイホー)を経験していない。だからこそ、彼女の行動自体を咎める理由がない。形はどうであれ彼女の選択は、今回の問題においていい方向に進んだと夏喜は捉えていた。 「事情も形式も、母と子の繋がりの前では穴だらけさ。すべてを投げ捨ててでも、その関係だけは壊しちゃいけない。わたしの友達にもそういう家族がいるよ。だから、君たちに出会えてよかった」  親子の形は人それぞれであり、それでもそれを維持しようとする気概は重要である。  子のためにすべてを捨てる親がいれば、子のためでも仕来りに縋ろうとする親もいる。  その中で見つけた親子の姿に、夏喜は自分に足りないものはなんだろうと考えていた。 「報酬の件は仲介者に通しておいてくれ。なあに、雑費はこっちで処理するよ。なんせ、わたしにはいくらでも出してくれるパトロンがいるからね」  じゃあねと、手を上げて出発保安検査場へと歩みを進めた。しのぶ別れもさっぱりと、見送りに来た2人があっけを取られる。
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