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Paragraph XX/闇より出でし幻想の古兵/Why Am I Me
「――常闇より金色、宵闇より白銀、素には鉄と水を注ぐ。
泥は肉となり、藁は骨となり、赫色鉱石は心臓となる。
混沌より命を捧げよ。静寂より血潮を散らせ。
されど、――我らの命運は七罪に劣らず。神を欺き、地に堕ちよ――」
ヨーロッパのどこか。石造りの密室の真ん中で、腐臭のする泥に枯れた藁を混ぜ、いくつかの魔石の古代魔具を積み上げている男がいた。
――いや。実際、その者が男か女かなんて、誰もわからなかった。
くぐもった声は低く、そこだけ切り取れば男と思うだろう。だが、その者の姿は、誰も見たことがない。
少なくとも、その者が――"泥の男"と呼ばれるようになってからは。
石造りの部屋に充満する魔力に反応して、床全体に施された魔法陣が励起する。その中心に置かれた泥と藁。それらを繋ぐように、中央の魔石が眩く煌めいた。
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