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「その刀、極東のものだな。なら、貴様はサムライか」
スワンプマンの問に、男はわずかに口を噤む。
――大義を得た。これで俺たちは侍だな。
いつか別れた友の言葉を思い出す。男にとっては遠く過ぎ去りし記憶ではあるが、今でも胸の奥にある魂に刻まれている。
「俺をそう呼んでくれるなら、そうなろう。俺を呼んだというのなら、俺にはそれに答える義務があるのだろう」
男にとって義務とは大儀である。守るべき事柄であり、それを信念に生きてきた。その結末が望んだものではなくとも、そう生きることしかできない。それが、第二の生となる幻想騎士であっても、男にとっての根幹は変わらない。
「お前たちが望むのなら、それに従おう。だが、義務ではあっても、俺にも事を選ぶ権利はある。それだけが――」
――すべてワシに任せておけ。お前は、下のものを良き男子に育て、鍛え、まとめることだ。そうすれば、皆お前を称えるだろう。ワシに任せておけば、お前の未来は安泰ぞ。
更に思い出す、友の言葉。肩を並べ、ともに築いた居場所も。男は友を切り捨てることで前に進んだ。
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