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「ぶっ……ぐっ……がっ、あぁあ、あ゛あ゛あ゛っ゛……」
世界が歪む。渦を巻いて、少し離れた位置にあった蝋燭の灯火だけが明るく、けれど小さくなっていく。偽ローワンは、背中から突き破って這い出た赤いなにかによる激痛に喘ぎながら、物陰から姿を現したドクターKの影を――
「――用無し役立たずでも、人形の素質はあるようだね。ンフフフフフフフフフフフフ」
――数時間後。ことの異常さを察知した魔法協会の魔術師たちが地下牢に通づる秘密の通路を駆ける。
「どうなっている。ここの入り口は厳重に封印していたはずだぞ。なぜ偽物の反応が消失するんだ」
「それよりもだ! 封印は解除されていないのに、どうやって中に入ったかがだな――」
「まて。牢の中がおかしい」
偽ローワンが収監されていた牢の前には、三人の魔術師が到着した。その中にいるはずの人影は暗く、深い闇の奥に気配すら同化し、それを確認しようと携帯用の照明の灯りをつけた。
「ど、どうなってるんだ……」
驚愕な声が漏れる。いたはずの人影は消え、牢の中は、赤い液体ですべてが染まっている。魔術師たちの鼻腔を刺激する鉄臭さに、これが血液だということを認識されるのは容易かった。
_go to "The Fang".
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