Paragraph 1/アルス/The Fang

2/6

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
 夏喜は片付けを手早く済ませてジューダスが用意したものを確認する。  粗銀と被膜の付いた鉄の棒、デリンジャーとラテン語で『永遠の魂(Aeon Anima)』と書かれた縁を黒い金属で装飾された白いハードカバー本。  それらが示すのは、召喚魔法の一端となる。ジューダスが済ませた術式は、それを完遂するための下地であり、最後は契約者となる夏喜自身が務めなければならない。 ///  宗次郎が食事を終えた後、三人は中庭に出ていた。空は高く、晴れ渡った好天。その下で、中庭の地面には粗銀を流し込んだ幾何学模様が描かれている。その中心に、夏喜はデリンジャーを置いた。 「――『白金(しろがね)黎明(れいめい)黄金(こがね)繁栄(はんえい)(まがね)(すた)る。  (てん)(かみ)()(ひと)を、(めい)()(くだ)る。  ()()夏喜(なつき)(なんじ)()血潮(ちしお)(そそ)ぐ。  ()()夏喜(なつき)(なんじ)()血肉(ちにく)(くわ)わす』――」  夏喜は呪文を唱えながら、手にした鉄の棒で幾つかの模様を追記する。鉄の棒を握る掌はわずかに切開し、血が鉄の棒を伝って地面へと落ちていく。追記したのは『天』と『地』と『冥』の因子は、すなわち『世界』の三層化。その因子を中心にあるデリンジャーへと接続した。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加