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夏喜は片付けを手早く済ませてジューダスが用意したものを確認する。
粗銀と被膜の付いた鉄の棒、デリンジャーとラテン語で『永遠の魂』と書かれた縁を黒い金属で装飾された白いハードカバー本。
それらが示すのは、召喚魔法の一端となる。ジューダスが済ませた術式は、それを完遂するための下地であり、最後は契約者となる夏喜自身が務めなければならない。
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宗次郎が食事を終えた後、三人は中庭に出ていた。空は高く、晴れ渡った好天。その下で、中庭の地面には粗銀を流し込んだ幾何学模様が描かれている。その中心に、夏喜はデリンジャーを置いた。
「――『白金は黎明、黄金は繁栄、鉄に廃る。
天に神、地に人を、冥に死を下る。
我が名は夏喜。汝に我が血潮を注ぐ。
我が名は夏喜。汝に我が血肉を喰わす』――」
夏喜は呪文を唱えながら、手にした鉄の棒で幾つかの模様を追記する。鉄の棒を握る掌はわずかに切開し、血が鉄の棒を伝って地面へと落ちていく。追記したのは『天』と『地』と『冥』の因子は、すなわち『世界』の三層化。その因子を中心にあるデリンジャーへと接続した。
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