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「――『深淵より吼えよ、牙の使い。
深淵より吼えよ、冥界の落し子。
深淵より、――至れ、超越より産まれし始まりの使徒よ、来たれ』――!」
幾何学模様の魔法陣の中心に、目には見えない何かの存在が集約される。その存在と、夏喜の魔炉には、確かな繋がりが出来つつあった。
「何を、しているの……?」
事態を飲み込めない宗次郎の目には、地面の模様が励起により赤く光って見えていた。ただそれだけでも常軌を逸している。肌に感じるわずかな違和感は、生命としての危険信号だと、理解せずとも反応していた。
「――『アストワント』――! さあ、こっちにおいで!」
夏喜が手を叩く。勢いで掌の血が飛び散るが、傷の痛みを忘れるほど、彼女は高揚していた。裡に感じる繋がりこそが、事の成功を物語っている。
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