Paragraph 2/いざ、カクヒエヴァへ/Hot Spot

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「だからアルスを召喚したというわけか。だが、それだけでは十分ではないだろう」 「それもそうよね。うーん。やっぱ鍛錬で乗り切る、のもねぇ」  夏喜の手元には古い武道書が広げられていた。"天然理心流(てんねんりしんりゅう)"――剣術、居合術、小太刀術、棒術、棍術など、ありとあらゆる戦術を記しながら、発祥から200年余りと現代寄りの古武術である。 「魔術師が近接を磨くのはやはり異端かな。けど君みたいな幻想騎士(レムナント)相手だと、同格になったら最後はステゴロの差みたいなところあるし、女は女の利点を混ぜないとね」 「なぜその流派にした? いや、別に文句がある訳ではないが、オレには日本の古武術の思想がよくわからないからな」 「それは仕方ないよ。なんせ近代のものだし、キミはそもそも聖職者だ。時代が違いすぎて、幻想騎士としての情報処理では認識はしても理解は困難だ。さて、なぜ選んだかと言われれば、なんとなくだね」  ジューダスが眉間にしわを寄せた。生き死にに関わる戦闘において、参考にするものがなんとなくで片付けられれば苦労はしない。だが、仮にもジューダスは彼女から背中を預けられ、また預ける関係にある。
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