Paragraph 2/いざ、カクヒエヴァへ/Hot Spot

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「怖い顔しないの。場当たりの発想もセンスも大事だ。戦術の知識は多ければ多い方がいい。なんせ幻想騎士相手にすることなんて、一生に一度や二度あるものじゃないし、相手が誰かだなんて確率がエグいガチャだよ。敵は神格かもしれないし、街のチンピラかもしれない。一軍の歩兵かもしれないしシモ・ヘイヘかも。しかも君たちってば神性能力を持ち出すから余計に困る。だからこそ、総合的な対応ができるものを片っ端から読み込もってわけ。昨日なんか北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう)とベトナムのゲリラ兵の行動記録読んだよ。そのうち脳内疑似トーナメントでどの戦術が一番か決めようかしら」  やっぱり楽観的だなとジューダスが肩をすくめた。ジューダスが夏喜も未読にしている資料の一冊を手に取る。 「げ、きけ、ん、"撃剣(げきけん)"か。なんだ、剣術かと思えば組手か?」 「ん? あー、甲冑組手か。いや、ちょっと違うけど、当時の戦って重い甲冑を着ている同士だと剣戟ってあてにならないから、その状況でもどう攻めるかみたいなのあるからね。剣術と柔術のバランスってとこよ」  西洋の剣術では重い武器により鎧の上から粉砕することも多い中、日本の古い戦ではそうではない。互いが一撃必殺を持つ中、勝ち筋だけで動けば虚に斬り伏せられる。接近戦の極意に近い戦術は、最終的には組み・投げ・極め・締めへとたどり着く。
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