Paragraph 3/御用改めであるⅠ/X-OUT

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「この薬が協会に奪われれば我々は崩壊する。幻想騎士なら死んでも止めろ。来いゴーグル。荷物をまとめるぞ」  ハカセに促されて倉庫の奥へとゴーグルが消えていく。 「やれやれ、日本人はせっかちだな。時間は終わらない。まあ、オイラからしたらだが。お前はどうだレンジャー」 「……どうでもいい。オレは敵を殺すだけ。その仕事をするだけだ」 「つれないね。今を生きるなら楽しめよ、レンジャー」 「……」    僅かな沈黙。それを打ち破ったのは鋼鉄の扉を蹴り飛ばす轟音だった。衝撃で土埃が舞い、入り口からは陽光が侵入者の背中を照らしていた。 「誰だ!」  レンジャーが声を上げる。視線逸しの術式を組み込んだ使い魔を使用し二重に展開した結界をたやすく突破する能力を持つ侵入者に警戒度を最大にする。 「――古典は好きかな。貴様たちからすれば、俺は辻斬り。名を聞こうなどと、道化が過ぎる」  黒鉄が倉庫内に歩みを進めた。迎え討つ二人の巨躯を目にしても彼の意志に変わりはない。  ――男子(おのこ)ならたとえ暗殺でも正面からぞ。そのほうがかっこいいであろう。  別れた友の言葉を思い出す。彼を縛る呪いにも等しくも、彼自身の心情の礎となっていた。 _go to "Samurai Sword".
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