<PROLOGUE/撃砕雷霆>

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 目の前の魔物は、すでに際限がない。このままでは膨らみ続け、憎悪と悪霊を周囲に撒き散らす。耐性のない人間がそれを浴びれば、またたく間にアンデットの類へと生まれ変わるだろう。  だからこそ、夏喜にはここで事を終えないといけない責任がある。 「クソ、人使いが荒いマスターだ。聖職者全員が悪魔祓いをできると本当に思ってるのか」 「思ってないよ。けど、そのならばそれに近いことはできるだろう。繰り返しになるけど、できないでは困るってもんだ」  ジューダスが手にしている槍は――神代の代物。長腕と評された太陽神が用いた、必殺の槍・ブリューナク。歪な五尖槍を介して雷を呼ぶ。その火力ならば、存在するものなら打ち勝てない道理はない。  膨らむ憎悪。二人の目の前にいる存在は数刻前まで人の形をしていたが、触媒となった子供の特異性を利用して悪魔に魂を売り、魔物へと変貌した。
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