10人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
目の前の魔物は、すでに際限がない。このままでは膨らみ続け、憎悪と悪霊を周囲に撒き散らす。耐性のない人間がそれを浴びれば、またたく間にアンデットの類へと生まれ変わるだろう。
だからこそ、夏喜にはここで事を終えないといけない責任がある。
「クソ、人使いが荒いマスターだ。聖職者全員が悪魔祓いをできると本当に思ってるのか」
「思ってないよ。けど、その槍ならばそれに近いことはできるだろう。繰り返しになるけど、できないでは困るってもんだ」
ジューダスが手にしている槍は――神代の代物。長腕と評された太陽神が用いた、必殺の槍・ブリューナク。歪な五尖槍を介して雷を呼ぶ。その火力ならば、存在するものなら打ち勝てない道理はない。
膨らむ憎悪。二人の目の前にいる存在は数刻前まで人の形をしていたが、触媒となった子供の特異性を利用して悪魔に魂を売り、魔物へと変貌した。
最初のコメントを投稿しよう!