Paragraph 0/夏喜という女/The Witch

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「依頼された『吸血鬼退治』はだいたい終わったよ。もっとも、吸血鬼と呼ぶには造形も意味合いも違うものだったけれど、あなたの依頼の進捗は良好だ」 「ならば、完了手続きを致しましょう。自営業(フリーランス)のあなたに事の処理を頼んだ以上、形式を通さねば上が(うるさ)いのです。ささ、こちらへ」 「ときに牧師よ、依頼のときはこちらで騒がしいほどに遊んでいた子供たちはどちらへ。この教会は孤児院としても機能していたはずだろう」 「それでしたら人払いも兼ねて、子供たちは村の集会場で小さなパーティー中ですよ。吸血鬼騒動で村は大騒ぎでしたが、たちの悪い噂だったと情報を上書きしています。今は大人たちも一緒になってグラスを持っているはずです」 「そうか。難儀だったな、ローワン牧師。君の表情が明るいことがその証拠なのだろう」 「ええ。ですから、――」 「して、なぜ君はを見ようとしない。救助した子供を抱えているのは彼だぞ」
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